シトロエンWRCワークス「シトロエン・トタル・アブダビWRT」のチーム代表に訊く2017の戦略


シトロエン・レーシングの歴史に刻まれる新たなページ

1919年に誕生したシトロエンは、モータースポーツへの挑戦のなかで、高い戦闘力と達成能力を発揮してきた。

1950 年代には、シトロエンのモデルがラリーで初めて勝利を達成している。しかし、現在の勢いが本当に始まったのは、1980年代に入ってからのこと。

当時、ヴィザ・ミルピステとBX 4TCという伝説的なグループBに準拠したマシンでの参戦に於いて、思うような成果を残すことは出来ずいた時期もあったが、

1989 年にシトロエンのレーシング部門は、シトロエン・スポールと名前を変え、パリ‐ダカールラリーで勝利を収める頃から飛躍の時代が始まり、1991年にアリ・バタネンが同ラリーで勝利を得る。

さらに 1994 年、1995 年、1996 年には、ピエール・ラルティーグが3連覇でこれに続いた。

以来、砂漠の王者と呼ばれたZX グラン・レイドは、クロスカントリーラリーに 42 戦の参戦、そのうち36回の勝利を挙げ、FIA クロスカントリーラリー・ワールドカップでは5回のタイトルを獲得している。

その間、WRCのプログラムを徐々に具体化させ、1999年のラリーカタルニアとツール・ド・コルスでは、フィリップ・ブガルスキーがクサラ・キットカーで、ワールドラリーカーを抑えての勝利を達成。

この「赤い軍団」は以降ギアを一段上げることを決定し、2001年のツール・ド・コルスでは、ヘサス・ピュラスの新型クサラWRC が優勝を飾る。

セバスチャン・ローブとダニエル・エレナによる2004年からの世界タイトル9連覇の幕が上がる

そして2002年シーズンの準備期間を経て、シトロエンは 2003 年から、初めての WRC フル参戦に乗り出す。

チームの滑り出しは順調でラリー・モンテカルロでは、セバスチャン・ローブ、コリン・マクレー、カルロス・サインツが1-2-3フィニッシュ。同シーズンの終わりには、シトロエンは初めての WRC マニュファクチャラーズタイトルを獲得し、その後2年間連続で防衛に成功する。

そしていよいよセバスチャン・ローブとダニエル・エレナによる2004年からの世界タイトル9連覇の幕が上がる。

しかし2005年シーズンの終わり、シトロエンは次期車両となるC4 WRCを開発する1年の間、参戦活動の停止を前言。次いで登場した新型マシンは、2008年〜2010年にかけての 3 シーズン、シトロエンにさらなるタイトルをもたらした。

そして2011年、新規定のWRカー導入のシーズンとなり、シトロエンのワークスマシンとして選ばれたDS3 WRCは期待どおりの活躍を見せ、2011年と2012年のマニュファクチャラーズタイトルの獲得リストを増やすことに成功した。

WRC への参戦を継続する一方で、シトロエン・レーシングは FIA 世界ツーリングカー選手権(WTCC)のチャレンジを開始。

ここでもシトロエンは成功を収め、3 年間でシトロエン C-Elysée WTCC 勢は69レース中50レースで勝利。シトロエンと、ホセ‐マリア・ロペスは、参戦初年度から世界タイトル 3 連覇を達成した。

そんなサーキットでの短い参戦期間を経て、シトロエンは販売戦力のシンボルである新型C3でWRCへ復帰する。そんな「シトロエン・トタル・アブダビWRT」を率いるテブ・マトン氏に2017年の戦略を訊いた。

チーム代表のイブ・マトン氏、2017年に勝利を積み上げて2018 年には世界タイトルを目指す

– シトロエンの WRC 復帰はどのように決まったのでしょうか?

「この決定は、様々な要素を加味して行われました。WTCC での 3 年間のプログラムが終わりに近づいてきた頃、シトロエンは戦略的に重要な位置づけとなる新モデル、新型 C3 の投入に向けて準備を進めていました。

ちょうど時を同じくして、FIA は WRC に新しいレギュレーションを導入する作業に入っていました。

C3 は、この内容に完璧にマッチしており、すべてが収まるべきところに収まったと言えるでしょう。これらすべての状況は、シトロエンがモータースポーツに関わるうえで、大きな支えとなります」

– 新しいレギュレーションに対応するための難しさはどこにありますか?

「当初は、これまでのレギュレーションを大きくアップグレードしたようなものだと簡単に思っていました。

ところが、実際の変更点はそれ以上のものでした。エンジンパワーが向上し、エアロダイナミクスの影響が高まり、電子制御式
センターデファレンシャルの復活が、大きな変更点です。

この 3 点について、我々は独自の知識を投入し、これまでの WR カーや、サーキットで得た経験を反映させました。これらによって、今までの限界を大きく上まわる速さを手に入れることにつながったのです」

– このプロジェクトが始まってからの作業を、どのように分析しますか?

「とにかく、信じられません! 開発スケジュールとして我々に残された時間は、これまでのどのプログラムよりも少ないものでした。

すでに身に付けた経験を持ってしても、マシンの設計と開発において、1 分たりとも無駄にする余裕はありませんでした。

それでも、チームのノウハウによって大きな問題もなく、ここまでたどりつくことができました。

この専門知識なくしては、予定どおりに車両を完成させることは不可能でした」

– シトロエン C3 WRC にかつての“グループ B”の面影が見られる部分はありますか?

「C3 WRC は間違いなく、ラリーファンを夢中にさせたあのマシンたちを思い出させます。

あれから 30 年を経て、いいかたちですべてが変わりました。特に安全面です。

それでも我々は、アグレッシブで唸るような“野獣”をドライバーたちが飼いならそうとする様子を、間違いなく目にすることになるでしょう。

クリス・ミークが、初めて C3 WRC をドライブしているのを見た時、私は目標を達成したと確信しました。新世代の WRC には、極めて豪快な側面があると言えるでしょう」

– このマシンは、WRC に新しい勢いをもたらすことができるでしょうか?

「以前の WRC は、ある部分においてアグレッシブさに欠けると、酷評されてきました。

ラリーの景観や、イベントの歴史という点では非常にスペクタクルな面を残していると思いますが、マシンの迫力やクレイジーな部分は間違いなく不足していました。

そんな側面が戻ってくるのだと思います。この変更が若年層のファンを刺激して、選手権にポジティブな効果をもたらすことを期待しています」

– シトロエン C3 WRC の開発において、クリス・ミークはどんな役割を果たしましたか。

「言葉にすれば、極めて重要な役目です。我々には、開発において技術的な経験と知識を十分に持つリーダーが必要でした。

クリスは10年以上もPSAグループで競技車両の開発に携わっているので、それぞれの部分において詳細な分析を行うことができる。

我々が予定どおりに計画を進め、目標に達することができた大きな要因のひとつは、間違いなく彼の存在あってこそでしょう」

– ドライバーにクレイグ・ブリーン、ステファン・ルフェーブルを選んだ理由とは?

「通常のコンディションのラリーで勝利を収めるという、2017 年の目標を果たすため、クリスとは以前から契約を結んでいました。

彼は 2016 年、どんな路面でも優勝を狙えるドライバーであることを見せてきました。

その他のクルーについては、選択肢としてふたつの方法がありました。ひとつは、すでにキャリアを積んだ経験豊富なドライバー、クリスとエースを争うこともできるようなドライバーを選ぶ方法。

もうひとつは、我々シトロエンのビジョンに沿った手法です。つまり、才能ある若手ドライバーを乗せることです。

もっとも、シトロエン・レーシングは過去 20 年以上にわたって同様のアプローチを行ってきているので、実に手堅いやり方でもあるのです!

クレイグとステファンのリザルトは、ふたりの才能の高さを示しています。我々の体制を強固なものとする、期待の持てるドライバーたちと言えるでしょう。

だから、彼らにチャンスを与えることに決めたのです。中期的に見れば、彼らは WRC の将来を担う人材ですから」

– この先、数シーズンで目指すものはなんでしょう?

「2017 年は、ライバルたちを凌いで、通常のコンディションでのラリーで勝利を収めたいと考えています。

そして2018 年には、少なくとも世界タイトルをひとつは獲得することが我々の目標です」

– WRC で築いてきたこれまでの歴史は、プレッシャーになりますか?

「様々な人のコメントを読んだ限りでは、多くの人が C3 WRC が最初から速さを発揮すると期待してくれているようです。

だから、双肩にプレッシャーがかかっていることは間違いありません。チームは以前のように環境が整い切ってはいないかもしれませんし、それをまとめ直すには少し時間がかかります。

これまで同様に驕らず、このチャレンジを、敬意を払いながら丁寧に挑んでいくつもりです。

ちなみに第1戦となるラリー・モンテカルロに於いては、クリス・ミークとステファン・ルフェーブルの二人のドライバーが異なる戦略を採ることになるでしょう。

これまでのテストの結果、C3 WRCの仕上がりは上々ですが、初期のメカニカルトラブルは避けたいので、他のコンペティターよりも着実に走ることになります。

チームのなかでもクリスの実力は充分なものを持っていますが、序盤では、どこが勝負所になるのかを見極め、守っていくことも重要です。

ただ大半メンバーにとってシーズンの前半は、学習の期間があるべきと考えています。特に緒戦は2台体制の挑戦となる。つまり、今回、我々はバックアップに対する選択肢も持ちませんし、セーフティネットも存在しないからです。」

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