米調査組織KPMG、自動運転車の普及で13年後のセダン車販売は激減すると示唆

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米国内で自家用セダンを購入する消費者は激減する

KPMGジャパン(本部:東京都新宿区、チェアマン:高橋 勉)の米国法人は、米国内の自動運転車普及の影響を「アイランド・オブ・オートノミー:自動運転車はどのように世界中の都市に出現するのか?」と題して刊行。この12月26日、同内容の日本語版を日本国内でもリリースした。

KPMGジャパンによると、これは当地に於ける消費者の意識の変化が、米国自動車市場に与える影響について独自調査したものだと云う。

それによると将来、自動運転車と新たなモビリティサービスの登場により移動手段の選択技が広がり、消費者の自動車購入意欲は低下すると予測した。

特に、自家用セダンを購入する消費者は著しく減少すると示唆し、実際の消費者は将来、自動車の購入を検討する際に、自動車を所有することの利便性や快適性。それとスマートフォンを使ってモビリティサービスを申し込む手間とを天秤に掛けて比較するようになる云う。

結果、自動車ユーザーは自身で自動車を購入するか、あるいは自動車を所有せずにモビリティサービスを移動手段として利用するかを選択。

その結果、米国内の自家用セダンの販売台数は急激に減り、2030年までに現在の540万台から210万台にまで激減する同社では予測した。

未来の消費行動は、地域性毎に異なる消費者ニーズに支えられる

より詳細には米国の自動車マーケットは、これまでのような国や地域単位から、150を超える「アイランド・オブ・オートノミー」(島のように散在する自律型モビリティ社会)へと変化するとしている。

これは大都市圏で都市ごとに異なる消費者の移動ニーズに対応し、そこでの移動ニーズの多くは、自律型モビリティサービスによって満たされるとした。

KPMG米国で同調査を担った自動車セクターリーダーのゲイリー・シルバーグ(Gary Silberg)氏は、「近い将来、破壊的革新をもたらす新たな交通手段が登場します。

それは完全自動運転車とモビリティサービスの組み合わせで、これによって全世界で1兆ドル規模の新たな市場が出現します。

ただし、この新しい自動車の利用環境は、何処でも直ちに実現する訳ではありません。

今後、我々が『アイランド・オブ・オートノミー』と名付けた大都市圏で順次実現されていくでしょう。

そして、このアイランドの地域性毎に異なる消費者ニーズに合った車種が求められるようになります。

その結果、その地域の自家用車の車種構成、特にセダンは大きな影響を受けることになるでしょう」と語った。

米国内には人口30万人以上の異なる地域社会が169存在する

実は米国では国勢調査局の用語で、「合同統計圏(CSA:Combined Statistical Area)」と呼ばれる、人口30万人以上の地域社会が169地域ある。

このCSAは、周辺地域と経済的・社会的に結び付いた隣接する大都市と小都市から構成された広域都市圏(消費経済圏)を指し、個々のCSAは、アイランド・オブ・オートノミーの人口統計的特性と合致している。

KPMGの米国法人では、自社の地理情報システム(GIS:Geographic Information System)を使用して、シカゴ、アトランタ、ロサンゼルス-サンディエゴの3つの広域都市圏で匿名化された携帯電話のモバイルビッグデータを分析。

これによって個人の移動に関する場所(緯度・経度)と移動時間を割り出し、CSAごとの特徴の解析を行った。

その結果、移動距離、平均移動時間、推定乗車人数に関して、それぞれのアイランドごとに異なる特徴が存在することが明らかになった。

自動車メーカーは、アイランドごとに異なる消費者ニーズに合った車種を特定するために、「環境」、「移動時間」、「移動距離」、「乗車人数」という4つの要素に加え、速度(時間と距離から算出)の他、「出発地/目的地」、「移動目的」などの複雑なデータ分析が求めらるようになる。

複数の自動車メーカーが工場を閉鎖し、セダン市場から撤退する

これについて先のゲイリー・シルバーグ(Gary Silberg)氏は、「これは、今日の自動車メーカーにとって極めて複雑な問題を生じさせます。

なぜなら、自動車の開発において、従来の車種区分の方法論のみによって市場を区分化する手法では、すべてのユーザーのニーズを満たすことはできないからです。

百を超えるアイランドから得られる数十億にも上る個々の移動データの中から、適切な製品ポートフォリオを特定することのできる自動車メーカーだけが、将来、市場で成功を収めることになるでしょう」と畳み掛けている。

こうした調査により浮き彫りになった169のアイランド市場と、完全自動運転車並びに新たなモビリティサービス(MaaS: Mobility-as-a-Service)の誕生は、自動車市場の様相を一変させ、セダンを好んでいた層を中心に、自動車を所有したいという消費者の願望を低下させる。

この消費行動の変化をKPMG米国のインダストリアル・マニファクチャリング部門の戦略リーダーを務めるトム・メイヤー(Tom Mayor)氏は、「自家用セダンの所有意識の低下は、自動車メーカーが予想した以上に深刻な破壊を市場にもたらすことでしょう。

結果、複数の自動車メーカーが将来工場を閉鎖し、セダンの生産から撤退する可能性は極めて高いと考えられます。

自家用車を所有しない新たな消費者ニーズに応えるクルマが必要

こうした大規模な変化の結果、現在、米国市場に年間80万台以上のセダンを供給している自動車メーカー10社が、将来3~4社にまで減少すると我々は予測しています。

自動車産業のプロフィットプール(市場全体の利益の総和)は変化の過程にあります。

この変化に対して自動車メーカーにとっての好材料は、1兆ドル規模の新たな市場がモビリティを中心として生まれつつあるということです。

この潜在的な市場へのドアを開ける鍵は、アイランドごとの消費者のニーズを個々の移動ごとにより深く理解し、複数のアイランドにわたってデータを集計して規模の経済を見出すことです。

その上で自家用車を所有せず、配車サービスなどを移動手段として利用する消費者の移動ニーズに応える、新しいクラスの自動車を開発することに掛かっています」と結んでいる。

KPMGは、独立した別の組織として活動する国際団体

ちなみにこの調査を行ったKPMGは、監査、税務、アドバイザリーサービスを提供する国際組織である。

世界154ヵ国のメンバーファームに197,263名のプロフェッショナルを擁し、サービスを提供しているが、KPMGネットワークに属する独立した個々のメンバーファームは、スイスの組織体であるKPMG International Cooperative(“KPMG International”)に加盟している。

つまりKPMGの各メンバーファームは、法律上独立した別の組織体としてそれぞれの地域で活動している。

これに倣い日本のKPMGジャパンは、KPMGインターナショナルの日本におけるメンバーファームの総称として活動している。

その内容は、監査、税務、アドバイザリーの3つの分野にわたる7つのプロフェッショナルファームによって構成されている。

そうした日本におけるメンバーファームは以下の通りとなっている。有限責任 あずさ監査法人、KPMG税理士法人、KPMGコンサルティング株式会社、株式会社KPMG FAS、KPMGあずさサステナビリティ株式会社、KPMGヘルスケアジャパン株式会社、KPMG社会保険労務士法人。