デンソーとユーグレナ、包括提携で日本初のバイオ燃料量産へ

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株式会社デンソー(本社:愛知県刈谷市、代表取締役社長:有馬浩二)と、株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)は2月20日、東京都中央区のデンソー東京支社に於いて記者会見を開き、微細藻類に関わる多様な製品商用化に向けた包括提携で基本合意したと発表した。(坂上 賢治)

両社はまず、微細藻類に関わるユーグレナ社の知見と、デンソーの工業化技術とを統合させ、バイオジェット&ディーゼル燃料の実用化と早期普及を目指す。

記者会見では、ユーグレナ社の出雲充社長並びにデンソーの伊藤正彦専務役員双方の立場から、微細藻類に対する自社の取り組み状況。そして個々の企業ブランドから既にリリースしている微細藻類由来製品の特徴について丁寧に解説した。

ユーグレナの出雲充社長
ユーグレナの出雲充社長

それによるとユーグレナ社の出雲社長は、石垣島で世界で初めて藻の一種である微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養技術の確立に成功(2005年)。

以来、「人と地球を健康にする」を経営理念に微細藻類ユーグレナ、クロレラなどを活用した機能性食品の他、化粧品の商用化にも漕ぎ着け、現在もさらなる製品開発と販売を行っている。

既にこのヘルスケア関連事業については、一定の商業ベースに乗り始めている。ちなみに微細藻類ユーグレナは、植物と動物の両方の特徴を持ち、ビタミン類やミネラルなど豊富な種類の栄養素をバランス良く含む藻の一種である。

また同社は、この微細藻類ユーグレナの事業領域を上記とは異なる分野にも展開している。

それはミドリムシから分離した脂肪分が、固体化耐性のあるバイオ燃料の「ワックスエステル」となることを踏まえてのバイオ燃料としての可能性に挑戦することである。

具体的には、千代田化工建設、伊藤忠エネクス、いすゞ自動車、ANAホールディングス、横浜市などの協力の基、2018年10月末に神奈川県・横浜市内に実証プラントを完成させ、日本を「バイオ燃料先進国」にするべく国内初のバイオジェット・ディーゼル燃料の実用化に向け、2019年春の本格稼働を目指してきた。

ただエネルギー・環境ビジネスの一環となるバイオ燃料事業は、ヘルスケア事業とは異次元の事業スケールを必要とする。

当初、ユーグレナ社を創業した時には、大学の研究室の机上で100グラム/年程度だった生産量を100トン/年以上に引き上げた。しかし、これをエネルギー産業分野で商業ベースに乗せていくためには、先のヘルスケア事業とは、桁外れの生産スケール拡大が求められるという。

具体的には、現行のバイオ燃料としての生産規模をいち早く1000倍以上へと押し広げる必要があると出雲社長は畳み掛けた。

そこで同事業の成立と成功を目指すため、製品の量産化に関して世界でもトップクラスの技術ノウハウを持つデンソーとの包括的提携が欠かせないと話す。

デンソーの伊藤正彦専務役員
デンソーの伊藤正彦専務役員

対して、自動車に関わる製品開発で持ち前の基礎技術を磨き続け、今や企業グループの壁を越えて、世界中の自動車メーカーに自動車系部品並びにソフトウエアなどを提供する自動車部品サプライヤーとなったデンソーの伊藤正彦専務役員からは、主力事業の自動車領域の製品化で培ってきたこれらの技術を、非自動車分野に活用する取り組みを精力的に進めてきたことから語り始めた。

実際、同社は「新しい価値の創造を通じて人々の幸福に貢献する」ことをキーコンセプトに、交通環境のインフラサービスの開発を筆頭に、産業・生活関連機器へと事業の幅を拡大させるなど、自らの事業領域を積極的に拡大させ続けてきている。

特に微細藻類に関しては、2005年2月に発効した京都議定書でCO2の削減が大きな社会的課題になったことを受けて、自らが発想の転換を図って、様々な基礎研究から微細藻類が持つオイルの蓄積能力に可能性を見い出したのだという。

そこで、2008年から国立大学法人京都大学と共同で微細藻類の「コッコミクサKJ」(旧名シュードコリシスチス)の研究を通して、藻体の油脂分蓄積効率向上に対する研究、及び屋外大量培養技術の確立に向けた実証実験を重ねてきた。

なおこのコッコミクサKJは、農林水産省委託事業を介して京都大学とデンソーが、共同開発の末成功に繋げた微細藻類であり、成長が速く、丈夫で培養し易い特徴がある。

2010年には、デンソーの工場拠点から排出されるCO2(藻の成長の原資となる)を利用するなど、コッコミクサKJの培養実証を下敷きに、自社の強みであるファクトリーオートメーション技術を融合することで農業の工業化に邁進した。

この頃から、自社技術を介して「未来社会の発展に貢献したい」との意欲を表明し始めたデンソーは、昨年の2018年に屋外培養の生産安定化に成功。前年比3倍の藻が生産できるようになっていた。

このような実績から同社は、2014年から保湿クリームの「モイーナ」(使用微細藻類はボツリオコッカス)を市販化。

さらに2016年には、熊本県・天草の廃校跡地で大規模な屋外培養を開始。加えて同年からはダカールラリーに参戦するトヨタ車体チームの「ランドクルーザー」に、コッコミクサKJから抽出したアルコールを競技車両用の燃料の一部として提供している。

そんな両社は、今回の包括的提携を通して、微細藻類に関する双方の技術を融合させ、地球環境の保護と人々の健康的な暮らしに貢献していくことを目的に事業提携の拡大を推し進めていく構えだという。

なお、その包括的提携の項目は以下の通り。
1.バリューチェーン構築を含む「バイオ燃料事業の開発」
2.「微細藻類培養技術の研究開発」
3.「藻類の食品・化粧品等への利用」
4.先端技術研究を含む「微細藻類による物質生産」

1.バイオ燃料事業の開発
この“微細藻類から燃料を作る”という事業の確立は、世界でもまだ誰もが成し得ていない大きな挑戦である。

ユーグレナ社は先の通り、2020年に向けた国産バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化計画を積極的に牽引しており、微細藻類ユーグレナの低コスト大量培養技術の開発。

及び、2018年10月末に竣工したバイオ燃料製造実証プラントを介したバイオジェット・ディーゼル燃料の実証製造・供給を2019年より予定している。

また2018年11月には「日本をバイオ燃料先進国にする」ことを目指し、「GREEN OIL JAPAN(グリーンオイルジャパン)」を新たに宣言した。

これを踏まえ今提携では「GREEN OIL JAPAN」の目標であるバイオ燃料事業を産業として確立することを目指し、複数の微細藻類を原料としたバイオ燃料の製造を実現することで、将来的な原料調達の多様化と安定的なバイオジェット・ディーゼル燃料供給に向けた研究を加速させていく。

より具体的には、ユーグレナ社のバイオ燃料製造実証プラントに於ける原料の一部として、微細藻類ユーグレナの油脂に加えてコッコミクサKJから抽出される油脂を使用し、バイオ燃料を製造・供給することを目指しており、デンソーは、ここから製造されたバイオディーゼル燃料の一部を社内運行バスに使用することを検討している。

2.微細藻類培養技術の研究開発
互いに微細藻類に取り組む両社にとって、より安価かつ大規模に微細藻類を生産することは共通の課題である。

ユーグレナ社と同じくデンソーでは、愛知県及び熊本県・天草市にて、微細藻類のコッコミクサKJの屋外での大量培養プロセスの研究開発を行っている。

そこで両社は、これまでに培ってきた微細藻類の育種・培養・回収・抽出などの工程に関する技術・ノウハウを相互に補完することにより、さらなる微細藻類の生産性向上を進めていく。

3.食品・化粧品等への利用
ユーグレナ社は、微細藻類ユーグレナが持つ植物性と動物性両方の豊富な種類の栄養素をバランス良く含むという特徴を活かした食品や化粧品等の製造・開発・販売を行っている。

対してデンソーは、コッコミクサKJが有する機能性成分のヒトの免疫力向上や、インフルエンザ、ノロ、ヘルペス等のウィルス抑制効果について研究を重ねてきた。

また先の通りで、優れた保湿成分を持つボトリオコッカスという藻のオイルを使用したハンドクリームの販売も行っている。

そこで今提携では、ユーグレナ社が有する研究開発力および商品の企画・開発・販売力を活かし、コッコミクサKJの機能性成分の食品・化粧品等への利活用を共同で検討。”微細藻類という自然素材で健康的な生活を社会に届ける” ことにも、両社で取り組んでいく。

4.微細藻類による物質生産
ユーグレナ社は、市場で求められる機能性成分の研究開発に関する知識やノウハウと、藻類が生産する物質の代謝解析技術を保有する。

一方デンソーは燃料研究の成果として微細藻類の遺伝子を改良する技術を有し、また遺伝子改良を高速かつ自動で行うことのできる設備を開発・保有している。

同提携では、こうした両社の先端技術の融合を介して微細藻類の特性を利用。有用な物質を効率的に生産することを目指す。

写真は、バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化と早期普及を目指すユーグレナの出雲充社長(左)と、事業拡大に意欲を見せるデンソーの伊藤正彦専務役員(右)
写真は、バイオジェット・ディーゼル燃料の実用化と早期普及を目指すユーグレナの出雲充社長(左)と、事業拡大に意欲を見せるデンソーの伊藤正彦専務役員(右)

以上、同会見を前提とした上記4項目の連携は、互いの保有技術を相互補完することで微細藻類の生産性を飛躍的に向上・安定させ、早期に商業レベルにまで事業規模を拡大させることができるように筆者には映る。

例えば、ユーグレナ社では、単位面積あたりから抽出されるオイル量が多いが、総生産量に関しては気象条件に左右される。対してデンソーが研究している藻は、気象条件に関わる生育状況の安定感が課題だ。

従って、ユーグレナ社の農学領域の知見は、デンソーにとっては魅力であり、ユーグレナ社にとっては、デンソーが持つ製品の大量生産に関わる事業ノウハウとエンジニア人材により、バイオジェット燃料のコストダウンを含め、実用化へのスピード大きく加速させることができる。

ユーグレナ社は、この大型提携を前提にまずは2019年夏に車両向けのバイオディーゼル燃料の供給を開始。さらに2020年に自社の実証プラントで製造するバイオジェット燃料を用いた有償フライトを目指す。

そしてその先の2025年には、バイオジェット燃料で年間総生産量25万トン/年・1リットルあたりの精製単価100円台の実現を達成(国内のジェット燃料のマーケット規模は83万トン/年)し、同事業の本格稼働へとその照準を見据えている。