独・VW、次世代EV専用プラットフォーム「ID.」を初披露


独・フォルクスワーゲンAG(本社:ドイツ・ニーダーザクセン州ヴォルフスブルク)はドイツ時間の9月17日、自社の次世代EVシリーズに適応させた「ID.(アイディ.)」専用シャシーを初披露した。

そして今後は、この最新電動プラットフォームを用いてフォルクスワーゲンブランドのコンパクトカーのリリースを皮切りに、傘下グループ全域のSUVやバンに至るまで、幅広い車種展開を行っていく方針を示した。

この新たなEVプラットフォームの最も大きな特徴は、電気自動車専用にゼロから設計されたことにある。同社はこれまで、電動車やハイブリッド車開発で既存の内燃エンジンを搭載したクルマを前提に次世代自動車を輩出し続けてきた。

そうしたケースでは一般的に、従来から代々の設計者が受け継いできたクルマ造りの考え方をベースに、車両の設計コンセプトを組み立て直す。または既に存在する内燃エンジン搭載車を手直しする等で、新たなハイブリッドカーや電気自動車に仕上げることが多かった。

しかし今回のID.用シャシーでは、既存の自動車業界で使い古された旧態依然とした開発手法を全て投げ捨て、電気自動車専用にゼロからプラットフォームを完全設計した。それゆえに新たなID.シャシーは、従来主流とされていたクルマづくりとは一線を画すものになったのだという。

したがって今回は、プラットフォーム設計前の段階で旧来の動力ユニット搭載を全く考えることなく、電動ユニットをいかに効率的に搭載し活用していくかに腐心した。

それによりEVとして純粋な技術的可能性を最大限に追求することが出来、車両設計時の各部機能パーツの配置を筆頭に、開発コンセプトそのもの自体が、これまで以上に柔軟な考え方に基づくものとなった。

このID.シャシー発表の壇上に立ったフォルクスワーゲンAG・e-モビリティ製品群開発責任者のクリスティアン・ゼンガー氏は、車両開発に関わる考え方と取り組みについて「このID.シャシーは、当社の自動車開発史で新たなマイルストーンになるでしょう。

このシャシーをベースとしたクルマ達は、今後何百万人もの人々が手に入れることができる近未来の真の電気自動車であり、併せてこのクルマは、完全なコネクテッド機能と実用性を兼ね備えたフォルクスワーゲン初のEVとなります」と語った。

今後、フォルクスワーゲンではこの新シャシーを使ったID.ファミリー(シリーズ)のうち、まずは完全なコネクテッド機能を備えた4ドア・コンパクトカーのID.モデルを来る2020年に発売予定だ。またその車両価格は、既存のゴルフ・ディーゼルとほぼ同じ価格帯になるという。

加えてゼンガー氏は、ID.用シャシーの技術的な優位点についても語った。その説明のなかでも特にEV向けとして優れている点を挙げ、それは「電気モーターとギヤボックスが一体となってリヤアクスルに組み込まれ、バッテリーが他のコンポーネントと共に、車両のフロア下に効率よく搭載されていること」だともいう。

ゼンガー氏は「このパワーユニットと蓄電池の新しい発想に基づくレイアウト思想によって、既存の内燃機関車両では実現し得なかった最適な重量配分と優れた走行性能が実現しています。

また独特の長いホイールベースと短いオーバーハングによって、乗員が利用するキャビンスペースでも、ひとクラス上のセグメントに匹敵する余裕ある居住空間が確保されています。

これは内燃エンジンが搭載されていないことで、前後アクスルを車両のより外側に追いやって配置できることから実現したものであり、電気モーターからリヤアクスルへのパワーの伝達もギヤボックスを介してより効率的に伝えられる仕組みとなっています。

なお今後登場する予定の複数のID.モデルの実性能は、搭載バッテリーの性能毎にWLTP基準で330〜550kmの範囲の航続距離を可能にし、125kWhの急速充電システムを利用することで充電時間も大幅に短縮されます。

その実力は30分以内に最大80%の充電が可能になるもので、これは第2世代のe-ゴルフの300km、WLTP基準換算での231kmを大きく超えるものとなります。つまり、もはや長い旅行や休暇が、新たなEVでは全く問題ではなくなることを意味しています。

加えて充電拠点に関してはフォルクスワーゲンも参画して設立した「 」 (イオニティ/2016年秋にフォルクスワーゲングループを筆頭に、BMW、 ダイムラー、 フォード・モーターが参画、翌2017に石油大手のロイヤル・ダッチ・シェル。そして今年2018年には、ボルボ、ジャガー、PSA<プジョー、シトロエン、DS、オペル>、テスラ等と参画交渉を進める)が、欧州全域で急速充電機能を持つステーションを順次整備していく予定で、その400拠点に上る殆どの拠点は来る2020年までにヨーロッパ全域で建設されます。

ちなみにそれぞれのステーションには、個々に最大125kWの充電が可能な2〜12基の充電設備が設けられており、しかもそれは既に欧州19カ国で拡大を続けています。

しかもこのイオニティでの30分間の充電でバッテリー容量の80%を充電することができます。これは電気自動車の搭載電池の容量、ならびにEVのドライバーがどのような運転を行うかで異なるものの、少なくとも150〜260kmの走行距離に相当します。

フォルクスワーゲンは今後も、これらの計画の実行と、目標の達成を高いイニシアチブを保ちつつ精力的に追求し続けて行きます。したがって当社のEVユーザーは、次の充電スタンドに到達できるかどうかについて心配する必要は全くありません。

我々は常に様々なシナリオを想定して日常的にEVを使用頂けるようにインフラに関しても準備を進めております。ゆえに将来、EVがニッチな存在になるなどと、ご心配頂くことはありません。我々は、将来のEV技術を真のマス技術に変革していきます」と畳み掛けた。

加えて先に述べた通りだが、このシャシーベースのモジュラー・エレクトリック・ドライブ・マトリックス(MEB)は、同社製ID.ファミリー全モデルだけでなく、グループ傘下の他のブランドバッチを掲げる車両にも相次いで採用されていく。

具体的な採用車についてフォルクスワーゲン車以外でMEBを採用するブランドは、現計画初期の段階で「アウディ」、「セアト」、「シュコダ」、「トレイトン(フォルクスワーゲン商用車ブランド)」等の名前が挙げられた。

このようなプラットフォームの拡大戦略について、フォルクスワーゲン ブランド モビリティ担当取締役のトーマス・ウルブリッヒ氏は「2017年にフォルクスワーゲンのブランドは630万台のクルマを生産しました。これはグループが生産した同年の1100万台の中で最大のシェアを誇っています。

一方で来たるべき近未来で多くの人々は、クリーンなEVで移動を愉しむことになるでしょう。特に都市では『移動すること』のほとんどが電力によって実行されるということです。

そうしたなか今回発表したID.シャシーは、当社のグループ全体で述べ1000万台以上をカバーする広範囲な電気自動車ラインナップの基盤となります。これはまさしく欧州におけるEV時代の幕開けを告げるものであり、世界の自動車業界に対して、新たな扉を開く役割を果たすことになるでしょう」と結んでいる。(  )