トヨタ自動車、「プリウスPHV」を刷新。EV走行可能距離を2倍超として次世代環境車の柱に据える


EVモードでの走行距離を68.2kmに拡大。充電した電気が切れてもハイブリッド車として37.2km/Lの低燃費を実現

トヨタ自動車株式会社(本社 : 愛知県豊田市、社長 : 豊田章男、以下、トヨタ)は昨年、米国・ニューヨークの3月23日~4月3日に開催された「2016年ニューヨーク国際オートショー」会場に於いてプリウスPHVを発表していたが、以来ほぼ11ヶ月を経た2017年2月15日、ようやく全国のトヨタ店・トヨペット店・トヨタカローラ店・ネッツ店を通じて同車を販売する運びに入った。

トヨタは、ハイブリッド車のリリース以降、プラグインハイブリッド車(PHV)をハイブリッド車に次ぐ「次世代環境車の柱」として位置付けており、プリウスPHVの発表会では、初代プリウスの開発責任者でもあった同社取締役会長の内山田竹志氏が登壇した。

内山田氏は、「新型プリウスPHVでは初代プリウスがその特長として受け継いできた環境性能を大幅に進化させたほか、電気自動車(EV)らしい力強くスムーズな走りを実現しています。

また未来感あふれる先進装備に加えて、充電の利便性も向上させた『いいクルマ」として進化させてきました。

そしてこのプリウスPHVは、日々の通勤や買い物などではガソリンを使わないEVとして走行し、電池がなくなってもハイブリッド車としての強みを活かし、長距離ドライブを楽しむことができるクルマとして仕立て上げ、これを次世代環境車のトヨタの回答と致しました。

トヨタは、PHVを人とクルマと自然が共生する社会を目指す『トヨタ環境チャレンジ2050』の基幹車種と位置付けており、今後も更なる商品強化に取り組んでまいります」と述べた。

ちなみにトヨタは2012年1月、電気利用の本格普及を目指し、先代プリウスPHVを発売。現在までに日本で約2万2千台、米国・欧州などを含めたグローバルで、約7万5千台を販売してきた。

そして今回、新型プリウスPHVの発表に併せ、新たにウェルキャブ(メーカー完成特装車)を設定して来る4月より発売を予定している。

このウェルキャブに於いては、新設定の助手席回転チルトシート車で回転したシートの座面前側を下げることにより、要介助者の乗り降りをサポートするほか、介助者の負担の軽減を目指している。

新型プリウスPHVの販売・生産概要は以下の通り

販売店:全国のトヨタ店・トヨペット店・トヨタカローラ店・ネッツ店の4チャンネル体制
月販目標台数:2,500台
店頭発表会:2月25日(土)、26日(日)
生産工場:トヨタ自動車 堤工場

メーカー希望小売価格(北海道、沖縄のみ価格が異なる。単位 : 円)

ウェルキャブ メーカー希望小売価格(北海道、沖縄のみ価格が異なる。単位 : 円)

普通充電(200Vまたは100V)・急速充電・ソーラー充電システムとニーズで選べる充電方法

新型プリウスPHVの主な車両概要は以下の通り

【環境と走りの両立】
大容量リチウムイオン電池を搭載、プラグインハイブリッドシステムの効率化によりEV走行距離を68.2kmに拡大した。

EV走行時の到達可能な最高速度制限は135km/hとして、電気のみで走行できる領域を拡大した。

駆動用モーターに加え、発電用モーター(ジェネレーター)を駆動にも使う「デュアルモータードライブシステム」を採用し、力強い加速を実現した。

「駆動用バッテリー専用ヒーター」や、世界初の「ガスインジェクション機能付ヒートポンプオートエアコン」を採用。EVモード走行中に、エンジンが掛かりにくい状態を維持することに貢献した。併せて1.8L高効率エンジンを搭載し、HV走行燃費でも37.2km/Lの低燃費を実現した。

PHVシステムの主要諸元は以下の通り

エンジン:型式 2ZR-FXE
排気量 (cc): 1,797
最高出力 :(kW[PS]/rpm) 72(98)/5,200
最大トルク :(N・m[kgf・m]/rpm) 142(14.5)/3,600
モーター型式 :1NM/1SM
最高出力 (kW[PS]) :53(72)/23(31)
最大トルク (N・m[kgf・m]) :163(16.6)/40(4.1)
駆動用バッテリー種類 :リチウムイオン電池
電圧 (V) :3.7
容量 (Ah) :25
総電力量 (kWh): 8.8

新型プリウスPHVの特徴1 – 充電システムの充実
AC100V/6Aの普通充電では、家庭の配線を利用できるようにして専用の配線工事を不要とした。

また外出先にはトヨタの販売店(約4,200基)や合同会社日本充電サービス(東京都港区・HP )の充電スポット(約14,600基)での充電も可能とした。

【充電方法と充電時間】
充電方法(普通充電/200V)
– 充電方法 200V/16A
– 充電時間 約2時間20分(満充電)

充電方法(普通充電/100V)
– 充電方法 100V/6A
– 充電時間 約14時間(満充電)

充電方法(急速充電)
– 充電方法  -
– 充電時間 約20分(満充電量の約80%)

新型プリウスPHVの特徴2 – 充電機能の概要
量産車では世界初となる「ソーラー充電システム」を採用した。

これは太陽光の自然エネルギーを、駐車中は駆動用バッテリーに供給し、最大約6.1km/日(平均で約2.9km/日)の走行分の電力量を充電可能とするもの。なお走行中に於いては補機バッテリーの消費を補い、燃費向上に貢献した。

外部給電機能は、今回追加した「EV給電モード」を選択することで、エンジンをかけずに家電が利用できるようにした。

さらにエンジンが作動する「HV給電モード」では、最大1,500Wの出力でガソリン満タン状態から2日程度の電力を供給することが可能となっている。

加えて社有車に外部給電付車両を導入し、災害時に貸出するなどトヨタ災害復旧支援活動の充実にも貢献できるようにした。

トヨタ初の11.6インチT-Connect SDナビゲーションシステムとDCMにより、安心・安全・便利な、つながるサービス「T-Connect」を提供

新型プリウスPHVの特徴3 – 外形デザイン
【フロント】
フロントマスクは、透明アクリル樹脂を採用した大型グリルと4眼LEDヘッドランプとして、未来的な顔つきを目指すことで先進感を演出している。

組み込まれたヘッドランプ小糸製作所のLEDランプで、先行車のテールランプや対向車のヘッドランプで車両を認識し、照射範囲を左右16個のLEDで細やかに制御するアダプティブハイビームシステムを採用している。

【リヤ】
バックドアガラスには、二つの膨らみを持つデザインとしたダブルバブルウインドゥを採用した。これに一本の赤いラインでつないだハイマウントストップランプと、リヤコンビネーションランプを組み合わせ、一目でプリウスPHVと印象づけるデザインとしている。

なおバックドアには、個性ある造形と軽量化を可能にしたTOYOTAブランド初となるCFRP製(CFRP Carbon Fiber Reinforced Plastics<炭素繊維強化樹脂>)を採用した。

【サイド】
ベースモデルとなった新型プリウスに対して、リアオーバーハングを延長。この長さを活かして、伸びやかで疾走感のあるシルエットを実現している。

【ボディカラー】
新開発した爽快で艶やかなスピリテッドアクアメタリックを含む、全9色を設定した。

新型プリウスPHVの特徴4 – 最新装備
トヨタ初の11.6インチT-Connect SDナビゲーションシステムとDCMの標準装備(除くS)により、視認性・操作性を向上すると共に、クルマがネットワークに接続することで、プリウスPHVユーザーの安心・便利を育むコネクティッドサービス「T-Connect DCMパッケージ」を提供する。

なお同機能は、初度登録より3年間は無料で提供していく。これらの機能として例えば、警告灯点灯時にクルマから発信される情報を基にオペレーターや販売店から適切なアドバイスが可能となる「eケア(走行アドバイス)」。

クルマから離れた場所からでも、充電状況の確認・操作、エアコンの操作、充電ステーションの検索などが可能なPHV専用スマートフォン向けアプリ「Pocket PHV」を提供するなどを展開していく。

【安全性能】
衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を全車標準装備した。プリウスシリーズは同機能追加によりJNCAP予防安全性能評価に於いて最高ランクの「ASV*17++」を獲得。

並びにJNCAP新・安全性能総合評価に於いて最高ランクの「ファイブスター賞」も獲得している。

【その他の要素・所感】
ちなみにプリウスPHVの国内投入に際し、発表から販売までの間に於いておよそ11ヶ月間の期間を要している。

具体的には同車については昨夏の段階で、一部報道機関に向けて車両先行試乗の機会が設けられており、そうしたインプレッション記事を眼にした読者も相当数おられる事と思う。

その理由については今日に至る経緯中、様々な要因があったものとは考えられるが、Tuvichomsaoの私見として、少なくとも2つの要因が存在すると見ている。

そのひとつは、トヨタ自動車として量産車初の採用技術となったCFRP製(CFRP Carbon Fiber Reinforced Plastics<炭素繊維強化樹脂>)バックドアに。

もうひとつは、T-Connect SDナビゲーションシステムと連動したDCMの標準装備。そしてこれを基としたコネクティッドサービス「T-Connect DCMパッケージ」にあるだろう。

まず、そのひとつめの要因であると考えられるCFRP製バックドアだが、これは今回、世界の炭素繊維市場に於いて東レ・帝人に次ぐ3番手のシェアを保持する三菱レイヨンの協力によるものとなった。今回のCFRP製パーツ成形には樹脂を混ぜた複合材料をベースにしたCFRPが使用されている。

しかし新型プリウスPHVに採用された成形構造は、旧来の長繊維の織物状シートに樹脂を含浸させたものを積層し、これを炉で焼き固めた過去の一般的手法とは大きく異なっている。

何故かと云うと、そのような旧来型のCFRP成形手法を用いると、大量生産前提の自動車製造に於いて、手間と時間が掛かり過ぎるためである。

そこで三菱レイヨンは、型の内部に短く切った炭素繊維のシートを重ね合わせ、そこに加圧した樹脂を注入・含浸させた後に硬化成形するRTM(レジン・トランスファー・モールディング)手法を提案することでプレス成形時間の短縮を狙った。

これはトヨタ側としても、同成形手法を用いることで、従来方式のようなオートクレーブ(圧力釜)を必要とせず、CFRP成形が実現することから、プリウスPHVのような大量生産車には適した手段である。

しかし自動車製造に於けるCFRP成形を大量生産車(既に一部の少量生産車では別手法を含め導入済み)に初導入したトヨタにとって、この新手法を用いたバックドア成形は文字通り初モノとなった。

その工程は、金属や成形済みの樹脂部品を組み付ける旧来の自動車製造の工程とは異なる。従って、堤工場に於けるCFRP成形工程内の品質管理基準(製造現場に於ける温度管理・湿度管理・季節変動管理など)で、より慎重を期する必要が生じたものと考えられる。

また、ふたつめのコネクティッドサービス「T-Connect DCMパッケージ」には、初度登録から3年間無料提供していく「eケア(走行アドバイス)」が搭載されている。

この機能の一部は云わば、故障などの車両のリアルタイムな発生データを、高速の通信回線を介してトヨタ傘下のディーラーネットワークと共有していく仕組みであり、具体的な修理サービスそのものは、トヨタディーラー店舗のサービス現場と連携して提供される。

そのためには、個々ディーラー店舗に於いても、顧客囲い込みのための「eケア」に対応するインフラ環境システムの設置。そして、それらの運用のため、メカニックを筆頭とするサービス対応者は、顧客対応など実施手順の習得研修などが義務づけられる。

従って、この環境整備に於いては、傘下のディーラーネットワークとの連携手法の共有と教育、ハードウェア整備が必要となる訳だ。

トヨタとしては、この領域に於いても既にLEXUSブランドでの顧客管理手段の一部として同種のサービス体制は確立済みだ。

しかし、とは云え最量販車であるプリウスPHVでの導入となれば、これに掛かる資本並びに環境整備に掛かるソフトパワーは総体的に大きくなってしまう。

このふたつは、発表から販売至る過程に於いて、少なからず車両リリース計画停滞要素の一因となったのであろう。

なお、プリウスPHVは搭載装備こそ国内投入車とは異なるが、米国に於いては、昨年11月より先行投入が開始されており、当地の流通ルート上には、およそ1500台余りのプリウスPHVが乗っているものと見られている。

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プリウスPHV ウェルキャブ 車両情報: